会計不正 会社の「常識」 監査人の「論理」 浜田 康

会計学で、一番最初に学ぶのは粉飾が可能だと言うことだ。会計の実務では判断ひとつで大きく数字が変わる。
著者は現在、あずさ監査法人代表社員
巻末の日本の会計不正・企業不祥事の歴史と監査制度等の変遷を見ると、懐かしい事件が目に付く。昭和40年の山陽特殊製鋼の粉飾倒産、華麗なる一族のモデルと言われている。
昭和49年の日本熱学工業の粉飾倒産、平成3年の証券大手の損失補填、平成10年の三田工業の粉飾倒産などが印象深い。
平成12年のクレスペール・インターナショナル・リミテッドのプリンストン債事件。当時資金運用に困っていた中小金融機関が経営破たんに追い込まれた。
米国のエンロンワールドコムの巨額会計不正とそれに付随して国際的な会計事務所が崩壊したのは衝撃的だった。日本でもカネボウその他の粉飾事件への関与で大手監査法人中央青山監査法人が退場した。
著者がまえがきで言うように、本書は真摯な姿勢で監査に望もうとしている公認会計士の指針となる。
しかし、企業経営に携わる者にも指針となる。経営者と監査人との関係、監査人と監査対象法人の担当部署との関係など幅広い視点で論じている。理論ではなく、著者の経験を踏まえて企業の具体的な事例を挙げて的確に問題点を指摘している。
大いに参考になる。

会計不正―会社の「常識」監査人の「論理」

会計不正―会社の「常識」監査人の「論理」