転ばぬ先の経済学 3

自分の大学生の娘に読ませたいが残念ながら親の勧めなど受け付けない。
鞘取り(裁定取引)を考えるの章では、著者が8歳の時にハイウェイに投げ捨てられた清涼飲料水の瓶を拾い集めて地元の食品店に持って行き1瓶を現金1セントで引き取ってもらう話がされている。この時食品店の商品に交換すると2セント相当に交換してくれる。そこで8歳の著者は母親からその食品店での買い物を引き受けるのである。母親からは現金で貰い、食品店では空き瓶と商品を交換してもらう。こうすると直接食品店で空き瓶を交換する倍の現金を手に入れることができた。
著者がこの話を学生にすると、息子が母親を利用して金儲けをするのはけしからんという学生が必ずいるという。これは、ゼロサムメンタリティ(誰かが勝つためには誰かが負けなければならない)という考え方だ。多くの人は裁定取引というものについて直感的にこうした反応を示す。この時母親はこの瓶の交換のことを知っていたし、母親は買い物に行く手間が省けて喜んでいた。瓶の取引で著者も母親も利益を得たのである。
裁定取引の意義を充分に学ぶ必要がある。単なる直感だけで鞘取りで儲けることが悪いように考えてはいけない。裁定取引で双方が利益を得ることが出来るのだから。むしろ世の中に必要な取引といえる。
著者はもちろん手段を選ばず儲けることが良いと言っているのではない。最後の章第15章は正しい行動をする、で締めている。人生において誠実さがなにより重要なことだと例をあげて解説している。それは利己心からでも結果として誠実に行動することがもっとも価値を生むとしている。短期的な結果で勝ち組負け組のレッテルが貼られるが、長い人生を良く考える必要がある。本書は経済学と名前をつけているが、人生の指南書として若い人が読むと本当に値打ちがある。

転ばぬ先の経済学

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