転ばぬ先の経済学 2

87歳で進行した乳がんと子宮がんに侵され、肝臓にも転移が見られる女性のケースが紹介されている。アメリカのメディケアプログラムでは、治療を断念し余命が6カ月以内と考えられる患者には、ホスピスケアが提供される。患者がホスピスケアプログラムを選ぶと、自宅で苦痛緩和治療法を受けられる。しかも、病院や老人ホームに入るよりずっと費用がかからないので、メディケアから1日88ドルの還付を受けられる。病院に入ると1日150ドルかかるので、患者にとっても政府にとっても合理的な制度だ。もちろん本書では更なる視点、魔女狩りについて話が展開していく。それはさて置くとして。
日本でも検討すべきだ。ある週刊誌によると延命治療が一番病院にとって儲かるということだ。1分1秒の延命のために高価な機械や薬を大量に使用するからだ。もちろん命は何者にも代えがたいが、患者の気持ち中心に冷静に考えるべきだ。本当に1分1秒の延命を望んでいるのだろうか。
新聞記事によると、自宅で死亡する人の割合は僅か12%。急に心臓麻痺等で自宅で倒れて亡くなった人も含んでいる。高齢者で在宅治療し、最後は家族に看取られるという人の割合は更に少ない。どう考えてもやさしい家族に見守られていると、最後の最後は病院に入れられて薬と機械で無理やり延命させられる。
政府でも24時間体制で往診できる在宅療養支援診療所を診療報酬で優遇する制度を昨年から導入している。高齢者の在宅療養について充分検討していくべきだ。一方で家族の負担もある。兎に角現在の命が大事で、生活の質を無視してむやみに延命だけをよしとする建前だけの考えを変えていく必要がある。