竹中平蔵大臣日誌

正確には 構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌だ。
竹中大臣は、TVの論戦を見るとどこか傲慢な姿勢が感じられ、相手に対案を出せと迫る態度が嫌だった。不良債権処理の方法など政策に対するマスコミの批判的な報道もあり、悪い印象を抱いていた。
しかし、本書は小泉内閣にいた閣僚による政権内部の動きを記録したものとして非常に興味を持って読んだ。
金融改革や郵政民営化の実施に向けた取り組みについて、本書ではハイテンションで語られている。竹中大臣の選挙応援演説を聞いた時に感じた印象と同じだ。演説も非常にハイテンションでメリハリがはっきりしていて分かりやすかった。とても学者の演説とは思えなかった。対立候補者に対する攻撃も上手だった。選挙候補者本人の演説より余程政治家らしかった。本書のトーンは政権内部の竹中大臣の緊張感を十分にあらわしている。面白くて一気呵成に読めた。
不良債権処理については、本書で言うように一定の成果をあげたと思う。竹中氏が言うように当時反対した者が政策の効果ではなく運が良かっただけだと自らの判断ミスを認めない態度はいただけない。政治は結果責任である。結果が出た以上評価すべきだ。
郵政民営化については成功かどうかまだ判断できない。しかし、いかに苦心して民営化案をまとめあげたかは理解できる。従って郵政民営化を争点とした衆議院解散総選挙をいかに歓迎したか述べている。そして民主党がいかに判断ミスをしたかも指摘している。
経済財政諮問会議の意義についても書かれている。政府の予算編成過程が一変した。年末の政府予算案決定を焦点にした各地方、業界団体の陳情も一変した。経済財政諮問会議の役割が小泉内閣で大きくなった。しかし、安倍内閣で今後もこの役割を続けられるかどうかは疑問だ。
興味深いのは2002年5月30日の経済財政諮問会議に政府税調の石弘光会長を招き税制論議を行ったことだ。その場で本間正明間議員が、財政専門家として、石政府税調会長の考えを厳しく批判したことだ。
また、自民党税調のドンといわれた山中貞則氏に高い評価を与えていることも興味を引く。本書の中で小泉首相以外で高く評価されているのは山中氏だけだ。
本書を読んで竹中氏に対する印象が変わった。好き嫌いは別として政治家として超一流の人材だと思う。

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌