パックス・ブリタニカ ジャン・モリス

大英帝国最盛期を1897年のヴィクトリア女王即位60周年記念祭を中心に描いた旅行記。現代の著者が当時の旅行者として帝国の各地の様子を描く。
日本では1897年は明治30年に当たる。明治27年に日清戦争が始まり、明治28年下関で清朝李鴻章伊藤博文陸奥宗光が会談し講和条約が成立した。
著者は当時の旅行者として大英帝国に植民地政策に倫理的な罪悪感など全く示さない。幾分英国人特有の皮肉を込めているが。植民地に伴う暴力、残虐な戦闘、政策を隠さず、現代の人権などふりまわさずに描写している。歴史を学ぶ上で現代の通念で過去を裁くほどバカげたことはない。とにかく冒険時代、わくわくする時代だ。もちろん白人にとっての話だが。
それでも、子供の時英国の翻訳本でやはり大英帝国の冒険談をわくわくして読んだ記憶がある。
コナン・ドイル(1859年5月22日-1930年7月7日)のシャーロック・ホームズはまさに大英帝国の時代に生まれた。イアン・フレミング(1908年5月26日 - 1964年8月12日)のジェームズ・ボンド大英帝国の黄昏に書かれた。どちらも全世界が期待する英国人像を描いた物語だ。
映画の007では、初期のショーン・コネリーによるジェームズ・ボンドの世界だ。第二次大戦後覇権は米国に移ったが映画の世界ではCIAでは役不足、世界的な陰謀に立ち向かうのは女王陛下の007でないと観衆が納得しない。
もとにもどると、本書は大英帝国最盛期の様子を生き生きと見せてくれる。

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (上)

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (上)

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (下)

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (下)