パックス・ブリタニカ 大英帝国最盛期の群像

日本の読者への序文で、著者は「私自身はといえば、パックス・ブリタニカが逝ってしまったことに、愛惜と安堵、恥と誇り、感傷と疑念が相半ばする、複雑な感情を抱く英国人の一人である。
なぜなら、私は、帝国時代に渦巻いた様々な感覚を、じかに味わった世代だからだ。日本にも、大東亜共栄圏が素晴らしい理念に思えた時代を記憶している人が、まだご存命ではないだろうか。」云々、述べている。
また、1904年バルチック艦隊が、日本と戦うためにシナ海に向かったとき、英国は途中の英国基地での給炭を拒否し、英国の戦艦二隻が、事実上全滅することになる対馬海峡に向かうロシア艦隊を尾行しつづけた。などの記述がもある。
本書は、ヴィクトリア女王即位60周年記念祭から始まる。大英帝国の帝国経営、今から思えば恥と誇りを感じる物語を、現在の視点で判断しないで、当時のありのままの感覚で淡々と描写する。現地人に対する虐殺、収奪も当時は恥ではなかった。ありのままの帝国主義の時代を描いている。過去を判断するとき、現時点の倫理観で判断するか、当時の感覚で判断するかとても大事な視点だと思う。

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (上)

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (上)

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (下)

パックス・ブリタニカーー大英帝国最盛期の群像 (下)